フメコイの好きな台詞

不滅の恋人、全公演が終了いたしました。

 

沢山のお客様にご来場いただきまして、ありがとうございます。

 

連日観に来てくれる方もいらして、スタッフ・キャスト・お客様で作り上げた舞台だったと思います。

 

 

このフメコイ稽古場ブログも今回で最終回となります。

 

最後は、脚本・演出でスプリングマン主宰の澁谷光平がお送りいたします。

 

スプリングマンはダンスもしませんし、快活なアクションや、劇的な展開もあまりありません。

 

ただただ、日常のちょっとした1コマを切り取った普通の人の物語です。

 

そんなものが面白いのだろうかと、いつも思うのですが、

 

ただの日常にはドラマがいっぱい潜んでいます。

 

物語を作るうえで、絶対に気を付けているのは、なるべく「嘘」をつかないこと。

 

作りものですから、嘘はついてしまうのですが、最小限にとどめて、本当の心と本当の演技を意識しています。

 

本当のものは、どこかのだれかに必ず伝わると思っています。

 

だれかの人生にそっと寄り添うような、ささやかな舞台になればいいといつも思っています。

 

 

主演をさかいかなにお願いして、岩田時子という主人公が生まれました。

 

まっすぐで、自信家で、感情的で、素直で、少しだけ計算的で、どこか男らしい時子は、

 

さかいかなにしか出来ない役だったと思います。

 

「弁当屋の四兄弟」以来でしたが、二度目だからこそ成しえることができた化学反応だと思います。

 

 

それは、日南田顕久にもいえます。

 

「どんまい、椿夫人」の学生さんを経ての新之助。

 

新之助のシーンは多くの笑いを生みましたが、それ以上に涙が出ます。

 

泣き笑いです。

 

 

波多野・あきやま・武藤の常連組にはいつも助けられます。

 

演出の仕事は、ああしろこうしろと指示を出すだけにとどまりません。

 

そういった補足の部分をさりげなくサポートしてくれます。

 

 

美藤大樹・山本徹は20・21歳という若さで、ベテラン勢にひけを取らない演技と姿勢で挑んでくれました。

 

自分が20そこらのころと比べて、ずいぶんと人間の出来た若者です。

 

20歳の頃なんて、まともに時間すら守れないどうしようもない人間でしたから…。

 

 

岩田翔平という役があります。

 

翔平はどこにでもいる、北九州のいまどき若者です。

 

そして物語を導くストーリーテラーでもあります。

 

ここが崩れたら「不滅の恋人」のすべては終わります。

 

山本徹はスプリングマン初参加で、正直不安もありましたが、しっかりと翔平を演じてくれました。

 

北九州のちょっと擦れた青年を瑞々しい演技で嘘なく表現していたと思います。

 

演出と若い役者の関係は、コーチと選手の関係に似ていると思うのです。

 

信頼関係がなければ、良い演技を引き出すことはできない。

 

次に会うときは、ひと回り大きくなった徹に会うことができるでしょう。

 

それが今から楽しみです。

 

 

最後に時子は自分のいとこの姉に似ています。

 

気が強くて、感情的で、小さいころよく泣かされていたと記憶します。

 

子供のころ池でおぼれたときに、真っ先に飛び込んで助けてくれたのは、彼女でした。

 

澄夫が時子の好きなところは「やさしいところ」といいますが、やさしさの種類は多く存在します。

 

 

PS このブログにある、「フメコイの好きな台詞」ですが、たかしちゃんに時子がいう、

 

 

「でもね、なんわからんけど、勝算はあるんよ。あてもなんにもないんやけど、ただただ自分の才能に変な自信がある」

 

 

です。

 

なにかを作る人間はみんなこんな感じなんじゃないかと。

 

それでは、次回公演でお会いしましょう。

 

では、また。

 

by 澁谷光平